Noriaki Kasai ski-jumping

ノルディックスキー・ジャンプ男子の葛西紀明選手が、3つのギネス世界記録を達成・更新しました。

「FISスキージャンプワールドカップ最年長個人表彰台|Oldest individual medallist at the FIS Ski Jumping World Cup」(新規達成・44歳293日)

「FISスキージャンプワールドカップにおける最年長のW杯ポイント獲得者|Oldest points scorer at the FIS Ski Jumping World Cup」(新規達成・51歳290日)

「FISスキージャンプワールドカップ個人最多出場|Most individual starts in FIS Ski Jumping World Cup competitions」(更新・578回)

葛西選手はこのほかにも「冬季オリンピック最多出場|Most Winter Olympic appearances by an athlete」(8回)、「FISノルディックスキー世界選手権 スキージャンプ競技個人戦最多出場|Most appearances in FIS Nordic World Ski Championships by an individual ski jumper」(13回)、「FISスキージャンプワールドカップ最年長優勝|Oldest Ski Jumping World Cup event winner」(42歳176日)も達成していて、現在保持しているギネス世界記録は全部で7個となりました。

この驚異的な偉業をたたえるべく、葛西選手所属の土屋ホームにお伺いし、公式認定証をお渡ししました。

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ちなみに、前回葛西選手に公式認定証をお渡ししたのは2018年。葛西選手はそのころから、50代になっても現役を続けていることを想像できていたのでしょうか。

「はい。まだまだできるという気持ちと、体力もあると感じていました。だからここまできたら60歳までやってやるぞと言う気持ちです」

9歳からスキージャンプを始めた葛西選手。自宅の目の前にあったスキー場に4台もジャンプ台があったそうです。初めは若干の恐怖心があったものの、いつの間にか虜になっていたと言います。

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「どうやって飛ぶんだろう。どうやったら飛距離が出るんだろう。そうやってなかなかできないことを試行錯誤してやり遂げるのが好きだったんだと思います」

今なおスキージャンプへの情熱が冷めない理由の1つは、その試行錯誤が終わらないからだそうです。

やはりジャンプは難しいという結論に行きつきました。難しいからこそ、できないからこそ、続けたくなるんです。

50代になっても体力の衰えは感じないと言う葛西選手。他の若い選手から「なんでそこまでやって疲れないの」と問われるくらいだそうです。メンタルの面でも、悩むことがないほど調子が良いとか。

心身ともに調子が良い理由の1つは、日々行っている走り込み。今までならゆっくり過ごすオフシーズンも、今年はシーズンの勢いを維持するために欠かさず走っているそうです。

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「走ることで減量や持久力を得られるだけでなく、忍耐力にもつながります。そして走りながら色んなことを考えるんですね。ジャンプで何をどうすればもっと良くなるのかとか、試合で優勝したらどうするかとか、人生設計までできるんですね」

究極の目標はオリンピック金メダル。そんな葛西選手の大きな原動力となっているのは、彼の活躍を見てくれる人たちの声だと言います。

「全国どこに行っても、すごいね、頑張ってるね、と言ってくれるんです。本当に嬉しいですし、もっと頑張りたくなります。これが僕の今のモチベーションなんじゃないかなって、40を超えてから変わりましたね」

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葛西選手は、ギネス世界記録に対しても考え方が変わったとか。今までは選手として活躍した結果についてきたものと考えていたそうです。しかし今は、記録を意識的に狙うようになってきていると言います。

ワールドカップでは、予選を通過しなければ、試合に出たという記録はつきません。今年2月のワールドカップは、予選入りがギリギリでした。そのとき"予選を通れば記録更新"というのが頭にちらつきました。どうしても更新したいという気持ちが芽生えました。これを機に、ギネス世界記録を作っていきたいという気持ちになりました。

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直近の目標はノルウェーでの世界選手権ワールドカップ出場、そして2年後のオリンピック出場。いずれも叶えばギネス世界記録更新につながるものです。今後の葛西選手の活躍に、目が離せません。