ジェイデン・アッシュマン: 1度のeスポーツトーナメントで100万ドルを稼いだ最年少ゲーマー

10代の子どもたちに、「親から"ゲームで無駄な時間を過ごすな"と言われた回数」を聞いたら、相当な数になるだろう。ゲームの世界は21世紀に大きく進化し、"娯楽"でもあり"職業"にもなりえるようになった。ジェイデン・アッシュマンが達成した記録は、その進化を象徴している。

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Words: Luke Wakeham

ジェイデン・アッシュマンのフォートナイト・ワールド・カップでの活躍は、ゲームのやりすぎでしかられたときに反論する材料になりえるだろう。彼は15歳229日で、世界最大規模のeスポーツ大会で100万ドルの賞金を獲得し、ギネス世界記録「1つのeスポーツ・トーナメントで賞金100万ドルを獲得した最年少ゲーマー|youngest esports millionaire from a single tournament」に登録されたのだ。驚くべきは、これは1位の賞金ではないことだ。アッシュマンは、チームメートと参加したデュオの部門で、2位に入賞した。それでこの賞金金額だったのだ。

当初は人々がゲーム大会を楽しむかの実験にも見えたeスポーツ。それは数年で世界最大級の観戦スポーツに急成長した。ゴールドマン・サックスによると、1か月のeスポーツ観客数は1億6,700万人で、NHLやメジャーリーグより多い。

大会のトロフィーとギネス世界記録公式認定証を手にしたジェイデン・アッシュマン

多くのゲーマーと同様、アッシュマンはマインクラフトやコール オブ デューティなど、あらゆるゲームに手を出した。「伯父と一緒にゲームを始めて、彼はコントローラーでプレイしててすごくうまくて。そんな彼を尊敬していた部分もあって、まずはコントローラーを使うことから始めました。」そして現在、アッシュマンはコントローラーの名士として知られている。

eスポーツの繁栄

フォートナイトでは、キーボードとマウスを使った方がより正確に制御できると言われている。コントローラーを使うプレイヤーたちは、プレイヤーのレクチルをターゲットに寄せつけるアシスト機能を使う。大会においては賛否がある機能だが、アッシュマンはこれを使ったスキルが評価され、コントローラーを好むプレイヤーを代表するような立場となっている。

プロのゲーマーへの道は厳しい。ゲーム好きの人は1~2時間ほどプレイするだろう。しかしプロになるにはそれでは足りない。マルコム・グラッドウェルの『天才! 成功する人々の法則』によると、何かのエキスパートになるには、1万時間を費やす必要があるという。ならばアッシュマンの場合はどうだろうか。

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フォートナイトは2017年7月にリリースされた。2019年の大会までにプレイできる時間は17,664時間あったということになる。そのうち5,840時間は睡眠に、1,900時間は学校にあてなければいけない。つまり、残りの9,904時間をフォートナイトに費やさなければいけないという計算だ。

フォートナイトは2019年3月20日、登録ユーザーが2.5億人になった。これはバトルロイヤルゲームでは初の快挙だ。さらに驚くべきことは、『フォートナイト バトルロイヤル』は無料のゲームモードだったことだ。エピックゲームズは、PUBGの人気を見て、わずか2か月で独自のゲームを開発した。

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フォートナイトの劇的な人気上昇は、ゲーム業界の壁を壊した。競合するコンソールが同じシステムに共存する「クロスプレー」は伝説的な存在だった。マイクロソフト、ソニー、任天堂に協力を求めないと成しえないからだ。しかし2018年9月26日、ソニーが方針を変更したことによって、念願のクロスプレーが実現した。

現在、フォートナイトは単なるビデオゲームの枠にはとどまらないものとなった。今やもはやSNSの1つだ。フォートナイトにログインして映画を観たり、トレイラー映像の初お披露目を観たり、ゲーム内のコンサートに参加したりすることができる。ラッパーのトラヴィス・スコットが2020年4月24日にフォートナイト内で開催したコンサートには1,230万ビュワーが集った。これはギネス世界記録「ゲーム内コンサート最大参加者数|highest attendance for an in-game concert」として登録されている。

話題をアッシュマンに戻そう。アスリート同様、ゲーマーも成功の前にはあらゆるハードルを越えなければならない。アッシュマンにとって最大の難関は、彼の母だった。Xboxでプレイする時間が長すぎると感じた母親は、家から本体を放り出したことさえあったそうだ。

アッシュマンと母親のリサさん 

「母さんとはよくぶつかったけど、最後には折り合いがついたよ」とアッシュマンは語る。「宿題はやらないし、ゲームに没頭しすぎたときもあった。けどお互いに境界線を引くようにしたんだ。」

初めは僕がフォートナイトをすることに反対していたけど、宿題しないで部屋でゲームだけやっているわけじゃないって証明したんだ。この賞金だけで終わりにするつもりはないよ。この先には僕の長いゲーマーのキャリアが待っているんだ。

2019年フォートナイト・ワールド・カップの開会式に招待されると、自身のスキルが認められたことを感じ、母親を連れて行くのが待ちきれなかったそうだ。「大会前に彼は、ニューヨークに連れて行って僕の実力を見せてあげると言いました。その通りになりました。私に認められたかったんだと思います」とリサさんは振り返った。

The first Fortnite World Cup was attended by thousands and watched by up to 2 million people online

ニューヨークで開催された決勝戦は、世界記録のオンパレードだった。ソロ大会の賞金総額(1528万7500USドル、約16億円相当)は、ギネス世界記録「eスポーツ個人戦トーナメント最大の賞金額|largest esports individual tournament prize pool」に認定。そして優勝したカイル・ギーアスドルフさんが獲得した300万USドル(約3.3億円相当)は、ギネス世界記録「eスポーツ・トーナメントにおいて単一プレイヤーに支払われた賞金最多額|largest payout for a single player in an esports tournament」に認定されている。

デュオで優勝したEmil Bergquist Pedersen(ノルウェー)とDavid Wang(オーストリア)

アッシュマンは、母親のために家を購入すると約束し、1年後にそれを実現した。「お家を買って、母さんとの約束を守れて良かったよ」とBBCのインタビューで語った。次の目標を聞かれると「明確なナンバーワンになりたい。僕が最高のプレイヤーだということをみんなに知らしめたいんだ」と答えた。

2020年はパンデミックでゲーム業界にも影響が出た。2020年フォートナイト・ワールド・カップも他のスポーツイベント同様、キャンセルとなった。PCのモニターを見て戦うeスポーツだが、観客が熱い声援を送るのもイベントの見どころの1つだ。観客のいない大会は受け入れがたかったのだろう。

それでもアッシュマンは踏みとどまることを知らない。2020年、新たに結成されたeスポーツチーム(Excel Esports)に加入し、FNCSの大会で13万ドルの賞金を手に入れた。ナンバーワンへの道へまた一歩、近づいた。

フォートナイトにまつわるギネス世界記録

ゲーム界を大きく動かしたフォートナイト。そのバトルロイヤルでギネス世界記録を達成したのは、アッシュマンだけではない。例えばアメリカのロッキー・ストーテンバーグ(a.k.a. RockyNoHands)は、首から下は麻痺しているが、長年の練習で、口のみを使ってゲームをプレイできるようになった。2019年3月26日、ストーテンバーグは「ビクトリーロイヤル最多数|」(509回)「口で操作するQuadStickで出したシングルマッチ・エリミネーション最多数|」(11回)でギネス世界記録に認定された。

Gamer RockyNoHands has set Fortnite records using a mouth-operated-joystick

ギネスワールドレコーズは、ギネス世界記録挑戦用のターゲットレンジを用意している。記録タイトルは「ギネスワールドレコーズターゲット・プラクティス フォートナイト・クリエイティブ・マップにおける1分間最高スコア|highest score in one minute on the GWR Target Practice Fortnite creative map」で、現在の記録保持者はライアン・ベンソン(320ポイント)だ。挑戦する前に申請し、その後送信されるガイドラインを熟読しよう。