アーロン・フォザリンガム: 車いすでの最も長いランプジャンプの飛距離

生まれつき障がいのあるアーロン・フォザリンガムは、子どものころからエクストリーム・スポーツの大ファン。脚が動かないからといってエクストリーム・スポーツを諦めるどころか、独自の車いすモトクロスのフォームを編み出し、いくつものクォーターパイプのギネス世界記録を破ってきた。

一覧に戻る

アーロン・ジェームズ・フォザリンガムは1991年11月8日、アメリカ、ラスベガスで生まれた。彼は二分脊椎という先天性の異常を持っている。これは脊椎、脊髄の成長に影響を与えるもので、フォザリンガムは脚が動けない状態となった。歩けなかったとはいえ、フォザリンガムはベビー・ウォーカーを使いこなし、アクティブなハイハイ期を過ごした。その後松葉杖の時期を経て、車いすと出会う。この出会いが、彼の人生を大きく変えた。

子どものころ、プロのスケーターやBMXライダーになるのを夢見ていたんだ。X Gamesを観るのが大好きでね。二分脊椎を持って生まれた自分は、そんなプロたちとは違う車輪を手に入れた。これを使って、夢を現実にしてみようと思ったんだ。
2016年パラリンピックの開会式でスキルを見せつけるフォザリンガム

養子として6人家族の一員となったフォザリンガムは、兄のブライアンが近場のスケートパークでBMXを乗りこなす姿を見て育った。次第に見ているだけでは物足りなくなり、ブライアンと父のスティーブの力を借り、車いすで挑戦してみることにした。1.22メートルのクォーターパイプから放たれたフォザリンガムはすぐさま転倒してしまうが、起き上がり再度挑戦した。この時点で、彼はもう病みつきになっていた。

フォザリンガムは現在、スケートボードやBMXのスタントを車いすで行うスポーツ、WCMX(車いすモトクロス)をけん引する存在となった。車いすでの経験を積むにつれ、行うトリックもグラインドやハンドプラント、パワースライドと、より複雑になっていった。恐れを知らない彼は、エクストリーム・スポーツで国際的な地位を獲得するにいたった。


ギネス世界記録を車いすで

フォザリンガムは、2008年に地元のスケートパークで「初の車いすでのバク転|First landed wheelchair backflip」を成功させ、初めてギネス世界記録を獲得した。実はその2年前にバク転をマスターしていたが、証人などの立会いのもと公式に認められたのがこの2008年の挑戦だった。これをきっかけに、いくつものギネス世界記録を更新し続けるようになった。

Aaron successfully lands the first wheelchair backflip under regulated conditions

次のギネス世界記録挑戦は2010年3月24日。フォザリンガムが初めてイタリア、ローマに訪問したときだ。「Lo Show dei Record」というテレビ番組に招かれ、「車いすでの最も高いランプ・ジャンプ|Highest ramp jump by wheelchair」(60 cm)を達成したのだ。視聴者の反響も多く、2年後に同じ番組に再来し、「サイドウィリーでバランスさせた最長タイム(手動車いす)|Longest duration balancing a side wheelie(manual wheelchair)」を18.22秒で達成させた。

しかしフォザリンガムにとって最も大きな記録挑戦イベントは2018年7月20日だった。カリフォルニアのテハチャピにあるランプで3つのギネス世界記録ー「車いすでの最も長いランプ・ジャンプの飛距離|Longest wheelchair ramp jump」(21.35 m)、「車いすでの最も高いクォーターパイプ・ドロップイン|Tallest quarter pipe drop-in on a wheelchair」(8.4 m)、「車いすでの最も高いハンドプラント|Highest wheelchair hand plant」(8.4 m)ーを一気に達成したのだ。

Aaron executes the highest wheelchair hand plant in 2018aaron-about-to-attempt-the-tallest-quarterpipe-drop-in-by-wheelchairAaron executes the highest wheelchair hand plant in 2018 ...and also the tallest quarterpipe drop in by wheelchair on the same day!

ランプ・ジャンプにおいては、水平距離はボウリングのレーンやキリンの身長より長い。2度のランプ・ジャンプの挑戦を終えたフォザリンガムは結果に満足せず、3回目に挑んだ。しかし最後の挑戦ではランプにひっかけてしまい、クォーターパイプの下まで転落してしまった。切り傷などはできたが、フォザリンガムにとっては数多く経験してきた転落の1つでしかなかったようだ。

ランプ・ジャンプの飛距離でギネス世界記録に挑戦するフォザリンガム。長さはテニスコートとほぼ同じ

「気持ちが高ぶって、1回目がうまくいったから、もっと飛距離が伸ばせるんじゃないかと思ったんだ。上まであがったとき、必要なスピードが出せないとも思ったけど、本当にそうかは、やってみないと分からないよね。だから思い切ったんだけど、若干足りなくて、ランプに引っかかって、そのまま下に直下しちゃった。でも大きなけがをすることなく一件落着だよ。」

Aaron farthest wheelchair ramp jump
Aaron tallest quarter pipe drop in on wheelchair

ナイトロ・サーカス

フォザリンガムは現在でも車いすを使った驚異的なスキルを世界中で見せつけている。MTVで放送された番組「ナイトロ・サーカス」に出演したエクストリーム・スポーツのスターたちとともに、世界中を駆け回っている。WCMX選手でナイトロ・サーカスのGiganta Rampに挑んだのは、今のところフォザリンガムのみだ。

「僕がやっていることは、今まで誰もやってなかったんだ。プロのBMXアスリートの友達からアドバイスを得るけど、彼らは車いすでトリックをやる方法を知っているわけではない。自分で考えなきゃいけないんだ。たくさんの練習が必要だよ」とフォザリンガムは語る。

フォザリンガムはスタント・グループ「ナイトロ・サーカス」のメンバーとなった 

また、障がい者スポーツのチャンピオンとして定期的に講演を行っている。「一部の人にとって車いすは"障害"と感じるかもしれないけど、私にとっては自由を意味するんだ!」

フォザリンガムはBox Wheelchairsの協力を得て設計されたWCMX専用の車いすを使用している。Box Wheelchairsはこの車いすを「世界で最も画期的なアクション・スポーツ車いす」とうたっている。鮮やかなグリーンの車いすは、破壊するのは困難なのは、フォザリンガムが立ち向かう過酷な環境にも対応していることで証明しているだろう。

僕のことを尊敬の目で見てくれる子どもや大人がいるのはもちろんだし、車いすはただの医療用具じゃなく、成功するためのツールだということを見せることができるのは最高な気持ちだよ。

WCMX専用車いす

1 - 強化フレーム 2 - マルチリンク浮動式後車輪 3 - 調整式デュアル Fox Float-R レーシング・ショック 4 - WCMX-Pro サスペンション・フォーク 5 - Spinergy X-Lace ウィール(R-10 hubs) 6 - Bones 58-mm スケート・ウィール 7 - ケブラー製シート

illustration-of-aaron-fotheringham