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宇宙航空研究開発機構が、ギネス世界記録「最も低い地球観測衛星の軌道高度|Lowest altitude by an Earth observation satellite in orbit」に認定されました。多くの地球観測衛星が高度600~800 kmで高度維持する一方で、超低高度衛星技術試験機(SLATS: Super Low Altitude Test Satellite)の「つばめ」は、世界記録となる167.4 kmの高度保持に成功しました。

超低高度で飛行する事の利点の1つとして、衛星画像の解像度を高くする事があげられます。例えば「つばめ」が高度167.4 kmで撮影した以下の衛星写真は、ボストンそして浜松の街並みを鮮明に映し出しています。

JAXA-Boston

JAXA-Hamamatsu

多くの人工衛星より低い高度で飛行するには、技術的なハードルも存在しました。多くの地球観測衛星が高度維持する高度600~800 kmの軌道には、地上の10兆分の1程度の微量な大気が存在していて、この軌道を高度維持する人工衛星は常にこの微量な大気の抵抗を受け続け、徐々に高度が低下していきます。人工衛星は高度を維持するために、定期的にガスジェットを噴射します。「つばめ」が高度維持する高度300 km以下では、それより約1000倍もの大気抵抗を受けます。そのため従来のガスジェットを用いて高度を維持すると燃料が早くなくなってしまうので、実用的ではありませんでした。

「つばめ」ではガスジェットに比べ燃料の使用効率が10倍良いイオンエンジンを使用しています。さらに衛星を小型化し大気抵抗を減らす事によって、超低高度でも長期間にわたって軌道を維持する事に成功したのです。

ギネス世界記録の公式認定証を受け取ったSLATSプロジェクトマネージャの佐々木雅範さんは、技術的な革新が記録という形に残す事ができて良かったと語りました。

「我が国の科学技術水準の高さ、そして長年培ってきたイオンエンジン技術や衛星の追跡管制技術など人工衛星の開発および運用に関わる総合的な基盤技術があったからこそ、世界に例のない低い軌道を保持できる衛星が実現できたと思います。この成果を将来の科学技術や衛星利用に発展させ、社会課題の解決に一つでも多く貢献して行きたいと思います。」

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「つばめ」は2019年10月に運用終了しました。記録達成、本当におめでとうございます!