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スケートボードでトリックを決めるスケートボーダーを見るだけでも圧巻する人も多いと思います。では、そのトリックを目隠しをしてやったら……? 

それをまさにやって見せたのが、スケートボーダーの大内龍成さん。2022年5月に2つのギネス世界記録「一分間で目隠しをしてスケートボードでオーリーを行った回数|most skateboard ollies in one minute blindfolded」と「目隠しをしてスケートボードでオーリーを行った連続回数|most consecutive skateboard ollies blindfolded」を達成しました。

「網膜色素変性症」という病気を持つ大内さん。障がい者向けの記録タイトルに挑戦することもできたのでしたが、彼はそれを選びませんでした。一体なぜなのか。大内さんの真意を探るべく、挑戦現場に向かいました。

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記録挑戦のステージは、埼玉県所沢市にあるインドア・スケートパーク「SKiP FACTORY」。季節外れのゲリラ豪雨の中、スケートパークに着くと、大内さんはウォームアップを始めました。ボードに乗っているときも、白杖を使い空間を把握していました。

大内さんが「網膜色素変性症」と診断されたのは小学生の頃だったそうですが、彼がスケートボードと出会ったのはそれから数年後の14歳のときでした。

「友達の家に遊びに行って、その友達の家にスケボーがあって、暇だからやろうぜとなってやったら、開始10分くらいでハマりましたよね(笑)ひと目惚れというより、ひと乗り惚れ、みたいな」

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そこから月日を重ね、あらゆるトリックを習得していく大内さん。しかし高校生になると、目の病気が急激に悪化してしまいます。

「どんどん視力が失われるにつれ、できていたトリックがどんどん失われていく。必死に努力してゲットして苦労したトリックも、ただ見えないだけで奪われていくという苦労はあった」

それでも大内さんはスケートボードを続けました。大内さんの両親は、病気を心配してスケートボードを買ってくれなかったそうですが、友達からパーツを集めてスケートボードを"自作"していたと言います。

大内さんは最終的には、自身の病気について楽観的に考えるようになったと言います。「病気なのは変えられないし、これはこれでうまく付き合うしかないんじゃない?みたいな感じでやってましたね」

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大内さんはウォームアップのときもリラックスしている様子。ボードから落ちても、それすら楽しんでいるかのように笑い続けていました。しかし話を聞いてみると、数日前にぎっくり腰になってしまったことが判明!

身体の調子が万全な状態ではないにも関わらず、まずは1分間の記録に挑戦。すると見事33回オーリーをすることに成功し、ギネス世界記録を達成しました。

大内さんによると、オーリーは多くの初心者が初めて身につけるくらいの"基礎中の基礎"のトリック。しかしそれを続けて行うのは大変だったようです。

「もう30秒になる前からハアハアしちゃって。「あれ、まだ30秒たたないの?」みたいな。途中で笑っちゃいましたもんね。とりあえず跳ぼうと思って……何回できたかは分からないですね。もう脚パンパン。(トリックは)難しくはないんだけど、ただ、疲れるんですよね(笑)」

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そこで、今回特に気になった疑問ーーなぜ障がい者を意識した記録タイトルに挑まなかったのかーーを本人にぶつけてみました。返ってきた答えは深く印象に残りました。 

俺が記録を打ち出しました、バーン、それは嬉しいし自分自身の誇りになりますけど、それで終わっては何か味気ないような……。

国境を越えたセッションをしたい。ギネス世界記録を通して、自分が名前を知らないだれかとセッションをしたい。スケボーって言うのは、競うと言うよりシェアをしたりセッションをしたりするのに重きがある。そういうものを大事にしたいんで、みんなが挑戦しやすい記録を選びましたね。

これを見たり聞いたりした人が「俺も挑戦しよう」「この記録、俺が塗り替えて見せよう」ってなってくれることが嬉しい。塗り替えられたら俺がまた塗り替えるだけなんだけどね。

休憩を終え次に挑んだのは「目隠しをしてスケートボードでオーリーを行った連続回数」。スキルのみならず持久力も必要になる記録で、大内さんはなんと20分近くスケートボードに乗りトリックを出し続けました。そしてやりとげたオーリーの回数は142回でした。

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『基礎中の基礎』のトリックを使ったハードなギネス世界記録を2つ達成した大内さん。この記録を通じて多くの人にインスピレーションを与えたいと言います。

「バレリーナ、スケーター、ラッパー、ダンサー、野球選手、サッカー選手、ビジネスマン・サラリーマン……みんなに見てもらいたい。それで「俺も自分でこうだって思うことやってみようかな」って風になったらすげえ最高だし。ちなみに俺は「目が悪いのにどんどん見えなくなるのにスケボーやるなんて」って、みんなから言われてたし。やっぱり危ないから。親にも最初は全然協力してもらえなかったんですよ。それでもやりたいわけでしょ。それを俺はずっと続けてきたわけですよ。「やりたい!」というただ純粋な思いで」

何が言いたいかって言うと、(やりたいことを諦めるような)BADな選択肢を考える暇があるんだったら、GOODな選択肢を考えなきゃ。「どうやったらこのやりたいことができるんだ?」、「どうすればこのやりたいという欲求を満たせることができるんだ?」それをひたすら考えることが重要だと思う。それを、自分自身の活動を通して、色んな人に見てもらいたいですね。

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