Fuyuki Kono and her certificate (left) Fuyuki Kono spinning in a wind tunnel (right)

人々がギネス世界記録に挑戦するのには、様々な理由があります。13歳の河野冬妃さんにとって記録挑戦とは、自信を取り戻すための過程でした。

2021年7月23日、河野さんは、埼玉県越谷市にあるインドスカイダイビング施設「FlyStation Japan」で、2つのギネス世界記録に挑戦。見事2つとも記録を更新することに成功しました。

  • 1分間にウインドトンネルの中で前後開脚回転を行った最多回数|most front split spins in a wind tunnel in one minute(78回)
  • 1分間にウインドトンネルの中で360度の水平回転を行った最多回数(個人)|most 360 horizontal spins in a wind tunnel in one minute (individual)(60回)

河野さんがインドアスカイダイビングに出会ったのは2018年。オーストラリアに10か月の短期留学に行っていたときのことでした。

「初めての感覚で、すごい!と思いました。それでとりこになってしまい、それから今までずっと続けています」

その後2019年にはシドニーで開催されたインドアスカイダイビングの大会で、フリースタイル・キッズ・インターメディエイト部門で優勝するなどしました。

日本ではまだインドアスカイダイビングの人口が多くないこともあり、河野さんは引き続き海外の大会に参加しようと考えていました。それだけではなく、2020年4月からオーストラリアへの留学までも予定していたのです。しかし、COVID-19の影響でそれらが実現できなくなってしまいました。

「大会などに一切出られなくなってしまい、本当に自信がなくなってしまって……。一時期は何もかも嫌になってしまいました」

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落ち込んでいた河野さんに転機のきっかけを作ったのは、彼女のコーチをつとめていた小林さんのひと声でした。インドアスカイダイビングにまつわるギネス世界記録に挑戦してみないかと、彼女に提案したのです。

「どうせ無理だろうなと思ったのですが、試しにやってみたら意外に達成できそうと感じました。自信をつけるためにも、インドアスカイダイビングという競技の楽しさをたくさんの人に知ってもらうてみにも、挑戦してみようかなと思いました」 

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挑戦まで2、3か月の練習を要したという河野さん。上達の鍵となったのは”繰り返すこと”だったと言います。

「挑戦する予定の技を1分間ずっと回って、それを何回も何回も繰り返して、自分がその時点で行ける所まで高めていくという作業を続けました。風が下から上がってくるので、少しでもずれるとバランスを崩してしまい、壁にぶつかってしまったり落ちてしまったり、形が崩れてしまったりします。また、ど真ん中で回ることも難しいと、今回の挑戦を通じて改めて感じました」

施設のスタッフやコーチ、そして家族が見守る中、河野さんは記録に挑戦しました。それぞれの挑戦で記録達成が認められると、会場に大きな拍手が湧きました。

公式認定証をもらったときは本当に嬉しかったし、会場にいた皆さん全員が拍手をして喜んでくれて、達成感を味わうことができました。記録に挑戦しようかなと思っている人には、ぜひチャレンジしてほしいなと思いました。

また河野さんは、記録挑戦当日までサポートしてくれた両親の存在が欠かせなかったと言います。

「私が何もかも嫌になったときも、直接”がんばって”と言われたらより不快になっていたかもしれませんでした。でも両親はそんなふうに言葉にはせず、態度で支えてくれました。ギネス世界記録の挑戦にあたっても、食事のバランスを母がきちんと調整してくれましたし、父も、私が練習で良い数字が出せなかったときに、スーツ替える?とか風の調整する?とか気を遣ってくれました。本当にありがたいなと思いましたし、今回のギネス世界記録は両親がいなかったら実現しなかったと思います」

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2つのギネス世界記録タイトルを更新した河野さんは、今後もスキルアップをしていきたいと語ります。「今自分ができることを精一杯やって、技でも勉強でも高めていきたいと思います。そして他のギネス世界記録にも挑戦したいと思っています」

そして、一時期は失いつつあった自信については……。

「完全ではないけれど、取り戻しつつあります」