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南米に生息するデンキウナギは、ギネス世界記録の書籍にも登場する生物。「最も電気を起こす魚|most electric fish」、そして「最も電気を起こす生物|most electric animals」として登録されています。しかし、科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された論文によると、ボルタイと呼ばれるデンキウナギは他の種類より電気を起こすと言います。

ペルーで捕獲されたデンキウナギは、最新の研究によるとE. variiの一例である可能性が高いという事が判明した

デンキウナギが生物学的に記載された1766年以来、デンキウナギの種類は1種のみだと考えられていました。しかし各国の大学や博物館からなる専門チームが、デンキウナギの系図を見直しました。

生体構造や生息地域などの研究の結果、少なくとも新たに2種のデンキウナギ(仮名はバリイとボルタイ)が存在すると結論付けました。

「ボルタイ」は、1799年に初めて電池を作った科学者アレッサンドロ・ボルタにちなんで名付けられた

さらに、初期の研究によると発する電気(EOD)はデンキウナギ各種によって異なり、ボルタイは860 Vもの電圧を放電していると言います。今まで記録されてきたデンキウナギによる放電は550-650 Vだったため、ボルタイは自然界で「最も電気を起こす動物|most electric animal」となります。

デンキウナギはデンキウナギ目に分類され、その特徴は電気を発する事。電気の使い方はそれぞれの種類によって異なり、電気を使って餌を捕まえたり、視界の悪い水中を移動したり、敵から身を守ったりするためにします。

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ボルタイによる860 Vの放電を測定したのは、セントラルフロリダ大学の魚類学者、ウイリアム・クランプトン博士。このデンキウナギは、ナショナルジオグラフィックの番組を作っている際に見つかったそうです。

ウイリアム・クランプトン博士(右)とナショナルジオグラフィックの撮影スタッフ(2014年1月) 

「ブラジルのタパジョース川で撮影をしていた際、撮影監督のColm Whelanが河岸の穴から出てきたデンキウナギに感電させられてしまったのです。自分も感電した事もあるし、他人が感電したのを見た事もありますが、この時は以前とは違いました。感電してから数分、彼は真っ白になって、震えていました。我々は不安になりましたが、幸い回復しました。そのデンキウナギが今まで見てきた種類とは違い、放電している電圧も違うとは、当時は思っていませんでした。」.

捕獲したボルタイの放電電圧を表したグラフ 

860 Vという測定値を見た時、はじめは何かがおかしいと思いました。

「測定機器を点検して、較正が正しいかを確認したうえで、何度か測定を繰り返しました。翌日も測定をしました。でも結果は変わりませんでした。」

クランプトン博士がペルーで電圧を測定している様子。地域から特定すると、バリイ種であると考えられる

それと比べ、エレクトリクスとバリイはそれぞれ480 Vと572 Vの放電が測定され、論文の著者は、各種の平均的な放電電圧を把握するためにより詳細な研究の余地があるだろうとしています。

デンキウナギ3種の生息地域を表した地図 エレクトリクスは赤、バリイは黄、ボルタイは青 

クランプトン博士によると、新たに見つかったデンキウナギの種類が250年もの間、人間に気づかれぬまま生息し続けた事を考えると、アマゾンの多様性は私たちを今後も驚かせるだろうと語った。

デンキウナギの研究は、インプラントの動力となるバイオ電池に繋がるかもしれない 

「このような発見が、持続不可能な資源利用がアマゾンなどを破壊し続けると、人間にとってどれだけの損失になるのかを考えるきっかけになればと思います。そしてアマゾンで今後何が見つかるのか…250年もの研究を経てなお、あのようなデンキウナギが見つかるのであれば、他にいったいどんな生物が潜んでいるのでしょうか?」

Thumbnail and header image credits: Colm Whelan; L Sousa