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中国四川省にある核桃坪野生化復帰基地で生まれた双子のジャイアントパンダが「飼育された母パンダと野生の父パンダのもとに生まれた初めての双子|first panda twins with a captive mother and wild father」として、ギネス世界記録に認定されました。

和和と美美は2018年7月25日生まれ。和和は午後1時35分に誕生し、美美はその約4時間後の午後5時55分に誕生しました。

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全てのパンダの新生児と同様、和和と美美は毛のない状態、目の見えない状態で生まれました。その時の体重は、和和は215 gでしたが、美美はたったの84 g。新生児の平均体重は150 gあたりだそうです。

余談ですが、ジャイアントパンダの成熟期と新生児の体重差は900分の1で、ギネス世界記録に認定されています。

双子の名前は、中国で人気のアニメ「熊猫和小鼹鼠」と「動物合唱団」のキャラクターから得たものなのだとか。

この歴史的な出来事を祝うべく、ギネスワールドレコーズは2019年6月24日に、双子のパンダと、飼育員の1人に公式認定証を贈呈しました。

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双子のお母さんはすでに7頭の赤ちゃんを産み「ヒーローママ」とも呼ばれた、現在17歳の草草(ツァオツァオ)。前回、2017年7月31日に生まれた男の子のパンダは残念ながら病気のため生後数か月で息を引き取りました。

草草は以前にも双子を産んだ経験はありますが、その時の父パンダは草草同様、保護施設で飼育されているパンダでした。

核桃坪基地を含む複数の施設を管理している中国ジャイアントパンダ保護・研究センター(CCRCGP)は、2016年から、飼育されているメスパンダの一部を基地の外に連れていきました。飼育されているパンダの遺伝子プールは限定的で、その状態だと遺伝的多様性や病気からの回復力などを脅かす恐れがあります。限定的に野生に連れていく事によって、野生のオスパンダと遭遇させ、遺伝子プールを強化させる事を狙っているのです。

双子は他の赤ちゃんパンダと同様、健康診断を定期的に行うなどして、丁寧に育てられています。2頭の生存の可能性を高めるため、数日に1回、和和と美美を母のもとから入れ替える事も行っています。

もうすぐ1歳を迎える和和と美美は健康で、神樹坪基地で近い年齢のパンダと一緒に過ごしたりして、生活技能を修得しています。

CCRCGPの邱宇氏によると、和和は穏やかな性格をしている一方で、美美は活発でいたずら好き。時には兄の和和をいじめる事もあるのだとか!

粉ミルクの生活は続いていますが、毎日少量の竹を食べ始めています。そして2頭が気に入っている遊び場は、ぶらんことすべり台だそうです。

2020年の夏ごろには、野生の環境を体験する事ができるようになる予定。しかし保護施設で飼育されたパンダたちの遺伝子プールの重要性を鑑みて、双子を野生に返す事はありません。

核桃坪と神樹坪基地は、臥龍自然保護区のなかにあり、それらは全て四川ジャイアントパンダ保護区群の一部。夾金山脈やキョウライ山脈をも含むこの自然保護地区は、地球で「最も大きなパンダの生息地|largest giant panda habitat」です。全世界のパンダの30%がこの保護区群に生息しています。

中国政府と国際的な野生生物保護団体による活動が功を奏し、ジャイアントパンダの数は数十年で1,000頭から2,200頭に上昇しました。IUCNのレッドリストでも「絶滅危惧」から「危急」に変更されました。

パンダの数が増えてきた事は素晴らしい事ですが、専門家によると、長期的にはいまだ綱渡りの状態だと言います。CCRCGPの張和民(Zhang Hemin)常務副主任は「場所によっては、野生の生息数は30以下の場合もあります。彼らを助けなければ、30~50年で絶滅してしまいます。だから私たちは飼育されたパンダを野生に連れていくトレーニングをしているのです」と語りました。

「(草草をきっかけに)今後もさらに多くのパンダを野生に開放するきっかけになればと望んでいます。」

パンダをどのように保護・飼育するかについてはあらゆる議論があり、団体によって異なるアプローチをしています。例えば核桃坪野生化復帰基地では、人間とパンダとの接触を控え、野生に近い環境をつくる事によって、パンダの独立を狙っています。

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パンダに近づく際、飼育員は白黒のコスチュームに身をまとい、人間の体臭を隠すためにその上からなんとパンダの尿をかけているのです!

他の保護センターでは人間がより密接にパンダと関わり、水を探す方法や木に登る方法を教えます。この方法だと、成長してから怪我や病気などで人間が助ける時のストレスが軽減されます。

パンダの生存に関わる最も重要な問題と言っても過言ではないのは、野生パンダの生息地の分断化です。ジャイアントパンダは現在3の省で生息しています(過去には17の省で生息していたと言われる)。分断・孤立された生息地をつなげるために、27,133-km2の保護地区をつくる計画が進んでいて、2020年には完成する予定。ジャイアントパンダ国立公園はアメリカのイエローストーン国立公園の3倍程度の大きさとなる見込みで、その場合は「最も大きなパンダ生息地|largest giant panda habitat」としてギネス世界記録にも登録される予定です。