ドッグトレーナーのカレン・コブさんが、はじめてブリアード犬を飼うことに興味を持ち始めたのは、1997年。ペット専門誌に、ブリアード犬の記事を見かけたことがきっかけでした。それから数日足らず、トレーニングを受けるために、彼女の元に1匹のブリアード犬がやってきます。

愛想が良くて機敏で、直感の効く性格が特徴のブリアード犬。カレンさんは、トレーニングをしているうちに「私もブリアードと暮らしたい」と強く思うようになりました。

そして彼女の家族として加わった、ブリアード犬のノーマン君。ふたりには、2つのギネス世界記録を達成するという、壮大なストーリーが待っていたのです。

Fastest 30 m on a scooter by a dog 2

ノーマン君と出会う頃、カレンさんはドッグトレーナーとして20年の経験を積んできました。柴犬を2匹飼っていましたが、1匹は健康問題を持っていました。仕事やプライベートで動物と接し続けることは大変でしたが、それをやめたいと思ったことはありませんでした。

長い月日をかけて、適したブリーダーを探し、ノーマン君と出会うことになりました。

ブリーダーは、すでに獣医さんに診断してもらった4匹を用意してくれていたので、その4匹たちとかくれんぼをしたんです。私がいなくなって動揺する子を探していたんです。そこでノーマン君は、とても動揺したんです。そして仰向けにさせたときの反応も見ました。ノーマンは仰向けの状態で固定しても、穏やかでした。

ノーマン君をすっかり気に入ったカレンさん。一緒にお家に帰る飛行機で、1回目の"レッスン"が行われました。なんと、飛行機に乗っている間に、「お座り」「伏せ」「おいで」を覚えてしまったのです。

それを見たカレンさんは「この犬は、他の子と違う」と確信したそうです。ブリアード犬は新しいものに対して警戒心を持つ特徴がありますが、ノーマンは、慣れない環境にも好奇心旺盛でした。

Fastest 30 m on a scooter by a dog

直ぐに家族とも仲良くなり、カレンの子どもたちのくせを真似するほどでした。

ノーマンが怖がらないように、裏庭で子どもたちのおもちゃに慣れさせました。そこで彼はスクーターに出会って一目ぼれをしたみたい!スクーターを習得したら、他のおもちゃに興味を示しました。彼は子どもたちの一員だと思っていたので、子どもがやっていれば自分もやりたいという気持ちを持っていました。

ノーマン君のセンスを見たカレンさんは、一般的なドッグショー以外に活躍できるところがないかを探し始めました。

そこでカレンさんは、ギネス世界記録タイトル「犬によるスクーター30 m走|Fastest 30 m on a scooter by a dog」に申請をしました。

何度かの練習を経て、ノーマン君は家族や友達が見守るなか、記録に挑戦しました。

「当日は、記録を更新できないんじゃないか、ルールを守れないんじゃないか、スクーターに乗るのがストレスにならないか…と、いろんなことが心配になりました」

しかしノーマン君は、カレンさんの気持ちにこたえてくれました。30 mのスクーター走を、たったの20.77秒で完走し、ギネス世界記録を更新したのです。

カレンさんによると、ノーマン君に新しいことを教えるときは、無理やりするのではなく、楽しく参加してもらうように心がけていました。

犬にとって、トレーニングは楽しいものでなくてはなりません。それを通じて、他の方法ではなかなかできない、強い絆を作ることもできます。お互いのことがよりよく分かってくるのです。

お家でボーっとしていると、ほとんどの犬は暇になってしまいます。スポーツや技を教える時間を作ると、それが彼らにとっての楽しみになるはずです。

ノーマンだって、私が綱やトレーニンググッズを持ち出すと、ゲームをしたり新しいことが学べると察して、興奮しはじめるんですよ。

トレーニングが大好きだったノーマンに、カレンはいろんなことを教えました。サーフィン、ロングボート、縄跳び、バスケットボールなどのスポーツのみならず、ドッグスポーツもどんどんマスターしていきました。

ついにはなんと、自転車に乗ることまでできてしまったのです。そこで、ギネス世界記録「犬による自転車30 m走|Fastest 30 m on a bicycle by a dog」にも挑戦することに。

カレンとノーマン君は、CBBCで放送されている、ギネス世界記録を紹介する番組 Officially Amazingで、観客が見守るなか挑戦を実行。見事55.41秒で30mを乗り切り、記録を更新しました。

飛行機ではじめたレッスンから数年。ふたりの絆はとても強いものになっていました。

私はノーマンを人間だと思っています。誕生日になるとプレゼントがもらえることを知っているし、クリスマスの朝も、誰よりも早くプレゼントをあけています。ゲストが来てみんなで円になって会話していたら、ノーマンはその中心に来て座っているんですよ。

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記録を達成してから数年経った現在。彼らはいままでとは全く違う挑戦に直面しています。それは、ノーマン君による悪性リンパ腫との闘いです。

2017年6月、ノーマン君はステージIVのガンと診断されました。末期症状の診断を聞いた家族はショックを隠せませんでした。治療をしなければ、ノーマンは2週間も持たないと言われたカレンさん。このような病気では、抗がん剤などの治療が一般的ですが、それでは寿命を1,2年のばすだけ。カレンさんは、ノーマン君の兄弟の力を借り、造血幹細胞移植を行うことにしました。

カレンさんはノーマン君の介護を続けています。ふたりは、毎日を懸命にすごし、病と闘っています。

ノーマン君の最近のFacebook投稿によると、ガンの転移は見つかっていないとのこと。1日でも早く完治することを、心から願っています。

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