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ギネスワールドレコーズの公式サイトでは、ギネス世界記録のデータベースから、勇気ある挑戦者を定期的に紹介しています。今回紹介するのは、ズバ抜けた行動力で全世界196ヵ国を1人で旅した女性トラベラーのお話です。女性が活躍するのは、もはや当たり前の社会になりました。しかしギネス世界記録保持者となると、そのビジョンはやはり桁外れです。こんな行動力のある人間、男女の別を問わず、なってみたいものですね。

あるときは「モンゴルの荒野」、またあるときは「フィンランドの氷河」で眠った

彼女の名前はCassie De Pecol(以下、キャシー)。27歳の誕生日をモンゴルの荒野で迎えたそうです。そこには、インターネットが使えるWi-Fiもなく、携帯電話もなく、存在するのは山々と自分自身と自身の考えだけ。  そんな彼女ですが、ある日には、死海にプカプカ浮かび、フィンランドの氷河の森林で眠り、スペインの王様と会い、クラゲがたくさん泳ぐ湖でシュノーケルをするという生活。

 

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キプロス島ではバーチャルレースに参加して走ったり、カリブ海に浮かぶグレナダでは拘束され、キューバでは初めて会った知らない人の家で寝泊まりし、アフガニスタンでは男性と握手を交わしたりという日々を送ったのです。

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ギネス世界記録「すべての独立国を訪れる最速時間」に挑戦


もっとも、これは若い冒険家であるキャシーの旅の始まりの序章にすぎません。2015年に西太平洋に浮かぶ500以上の島々からなるパラオをスタート地点として、「すべての独立国を訪れる最速時間|Fastest time to visit all sovereign nationsというギネス世界記録に挑戦したのです。ちなみに、世界には独立国が196ヵ国存在します。


冒険へのスタート時、最速時間のベンチマークとして3年3ヵ月6日という日数が設けられました。この数字は旅行に最も精通している者であってもなかなか厳しい日数でした。


旅で世界記録に挑戦するのは米コネチカット州生まれのキャシーにとって初の試みでしたが、1人旅するのは初めてではありませんし、むしろ1人旅にはかなり慣れていました。独立精神にあふれる彼女にとっては、1人旅の方が好まれたのです。


「1人旅をすることによって、その国の文化や国民についてさらに多くのことを学ぶこの上ない自由と機会が与えられると思ってるわ。1人なら、どこに行くのも自由だし、誰にも合わせなくていいでしょ。自分自身のために作った物語を受け入れ、自分だけが知っている経験を持つことができるのよ。他の誰にも関係がない個人的な経験を持つことってある意味、そこには神聖さがあると思うの。私は1人旅をしている間、その瞬間を愛したのよ。」

 

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現在27歳のキャシーは18歳の時にも1人旅を経験

キャシーは幼い頃から、冒険心を抑えることができませんでした。18歳の大学時代にさかのぼると、ほとんどの新入生とは異なり、情熱的な放浪者ともいえる彼女はアメリカの地を離れ、1年間をコスタリカとニカラグアで勉強し、21歳の時に再びアメリカの地を離れ、夏にライフガードで稼いだ2,000ドルを手にして世界をこの目で見ようと熱望したのです。

2,000ドルの予算は2年間持ちこたえ、その間に6大陸と24ヵ国にまたがるツアーに参加しました。
 

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2,000ドルというのは日本円にして30万円にも満たない金額ですが、どのように旅を続けられたのか聞いてみたところ、


「お金に困った時には、駅で寝泊まりしたり、カウチサーフィンで探して他人の家に宿泊させてもらったりしたわ。時には朝食やベッドメイキングするお手伝いをして、その代わりに部屋代や食事代を無料にしてもらうなど、やれることは何でもしたの。」


21歳から730日間このようなノマド経験をしたことは、現在27歳になる彼女が「すべての独立国を訪れる最速時間(Fastest time to visit all sovereign nations)」のギネス世界記録を破る時に良い練習になったと後で振り返っています。しかし、その当時は、旅を終えると母国であるアメリカに戻ったといいます。


彼女はアメリカの地に戻ると、大人になったらやらなければいけないと信じていたことを行いました。つまり、安定した収入を稼ぐという目標をかかげて9時から17時までフルタイムで働いたのです。


そんな新しい生活を送るも、自身の生活に嫌気がさし、満たされない気持ちが募ります。


自身の現状が拘束されているように思った彼女は荷物を詰め込み、カリフォルニアに移って自らが望む満足した人生を送れるよう新しい方向性を探したのです。

 

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一度の人生、ワクワクするような生活を送りたい

「私は自分自身のことをその時考えたの…。「私には何ができる?人生に目的をもたらすために何ができるんだろう?幸福、キャリア、情熱、ワクワクするような興奮をもたらす人生をどうすれば作っていけるんだろう?一度の人生で何を成し遂げられるんだろう?」ってね。オフィスの椅子にただ座っているなんてしたくなかったわ。私は一度の人生で、自分自身、さらには他の人にとっても役立つきわめて重要な何かを作りたいと思っているだけなの。」と語るキャシー。


「兄弟とともにヨーロッパを旅した高校生の時に、世界中の国々をすべて旅したいという夢があったのを思い出したの。どうすれば最短時間ですべての国を訪問できるのか考えた時に、絶対に世界中を周ることを心に決めてプランを立てたのよ。」

 

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そうして彼女は行ったことのある国も含めて196ヵ国を訪れるミッションを掲げて、ギネス世界記録を樹立させるために3年以内という目標を決めて女性初の記録挑戦にいどんだわけです。


彼女がミッションを掲げた時点では、これまでどの女性も達成したことがない挑戦であり、もし成功すれば世界中の女性に大きなインパクトを与えることは間違いありませんでした。


「私は若い女性たちに、心や魂でやりたいと感じることは何でも成し遂げられることを示したかったんです。たとえその目標が男性にしか成し遂げられないようなものでも。」

 

「"196ヵ国訪問プロジェクト"では、これまでの常識を覆すような大きな機会が与えられただけでなく、訪問する国で平和について伝えたり、何かインスピレーションを与えることを使命と考えたわ。ダライ・ラマはかつて、「偉大なる愛と偉大なる成功には、大いなる危険が伴うことを忘れないように」と語ったけど、私はそんなリスクなら喜んで取りに行くと思えたの。」

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「訪れる国々で平和を伝えたい」という願いが根底にあった

キャシーは196ヵ国を訪れている間、国際平和研究所(International Institute of Peace)とタッグを組んで平和大使として観光を行うほか、毎週YouTubeの動画を作製していました。動画によって、視聴者にその国の文化的規範を学んでもらうだけでなく、問題のある国を訪れた際に触発されて模索した活動にも注目してもらえたのです。彼女はギネス世界記録を達成するという目標を追いながらも、観光を通じて平和を促進するべく、40ヵ国で16,000人超の学生たちに「世界市民として友情と団結を促進することの重要性」について語りました。

 

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講義で話す内容は、女性たちが成し遂げてきたことや、責任ある観光のこと、経済を通じて平和を定量化する方法などの話題に焦点を当て、旅の途中で出会った現地の学生に良い影響を与えられることを期待したのです。


「講義中、学生達はもっと多くのことを学びたいという姿勢を見せてくれたわ。講義後には好奇心あふれる質問を沢山してくれたの。私は今でもその子たちとコミュニケーションをとっていて、なかには私の講義を聞いて自分の夢を追求することを決めた子もいるのよ。」

 

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旅の途中ではネガティブな気持ちになったことも

ここまで聞くと目的をクリアして向上心あふれる順調な旅のように思えますが、ギネス世界記録達成と平和を伝えることを目的としていたため、多くの人が想像する「放浪旅」以上のプレッシャーがあったそうです。


1ヵ国で1日から2週間過ごしていた彼女は、睡眠不足に直面したり、飛行機を逃すこともありましたし、国ごとに大きく異なる文化的規範を認識しておく必要がありました。「両親が精神面のサポートを大いにしてくれたわ。私が196ヵ国訪問プロジェクトを辞めたいって思った時には彼らに電話して、たとえ真夜中2時であっても、辞めないように励ましてくれたの。」


このようなネガティブさも乗り越え、他の人が成し遂げられないような旅を続けたキャシー。訪れた中で好きになった国は、コスタリカ、ヨルダン、スイス、パキスタンとのことですが、その理由は人の心が優しかったからだと言います。

 

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環境は違うけど、同じ女性同士、シリア人女性と気持ちがつながった

「私がシリアを訪れていた時、タクシーに乗っていたら若い女性が1人入ってきたの。その女性はタクシーに乗り込む前に2人の女性を抱きしめていて、その光景をバックミラーで見ていたのね。彼女は泣いていたわ。なぜ彼女がうろたえていたのか聞くことにしたの。彼女の話から学べることがあると思ってね。 その女性は28歳でドイツにいる夫が難民プログラムに受け入れられたため、故郷を初めて離れることになったと語ってくれたわ。旦那さんとは1年間会っておらず、この2年間でご両親とも亡くなってしまったそうなの。


彼女の自宅はアレッポの反乱軍によって破壊されたそうよ。私はイエメンにこれから行く予定だったから、その時は2人とも同じ感情を共有できたの。親しみのある場所を離れて、新しい場所に出向く気持ちをね。私と彼女の経験はきわめて異なっていて、それこそ文化、宗教、社会的ステイタスがまったく異なる2人でもその瞬間に気持ちがつながって、1つになれたのよ。彼女は私に「あなたのこととっても好きよ」と言ってくれて、私も同じ気持ちであると言ったわ。彼女の初めてのフライトが無事で、1年間会えずにいた旦那さんともう一度会えるよう幸運をその時願ったの。」

 

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196ヵ国を周って生活してきたキャシーですが、彼女が最も愛している国はやはり母国のアメリカだそうです。食べ物、人種、風景が多様なアメリカ以上に素敵な国はないと言います。


ギネス世界記録の「すべての独立国を訪れる最速時間|Fastest time to visit all sovereign nations 」を1年193日で無事に達成して、現在は母国の土を踏んでいます。旅を終えたアクティブな彼女は、全世界を旅したことがきっかけとなり、今ではインスタなどのSNSアプリで旅の回顧録をポストしたり、講演の仕事、ドキュメンタリーの仕事を受けているほか、「情熱プロジェクト」のための資金を確保したい人たち向けにセミナーを行っています。

 

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ギネス世界記録保持者となった心境

「私がこの旅を遺産として残し伝えたいことは常に、その人の限界を押し上げ、情熱に従うようなインスピレーションを与えること。私自身、自分のキャリアや人生のために何をしたいのかわからず、本当にもがいていたわ。9時から17時の仕事に追われているのに、お給料ぎりぎりの暮らしをして余裕がなかったの。でも今は夢を達成しただけでなく、ギネス世界記録保持者になったことがきっかけで、夢のようなキャリアを築けているのよ。」


27歳にしてこれだけ自分の人生に向き合っている女性がどれくらいいるでしょう? 本当に彼女の行動力と信念は、尊敬に値しますね。



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[編集部]