ロイス・ギブソンさんは、犯人逮捕のための似顔絵アーティスト

今回ご紹介するロイス・ギブソンさんは、危険な犯罪者たちの似顔絵を描くのが仕事。何か事件が起きて犯人が逃走している時、重要なカギとなるのがこの似顔絵です。

テキサス州・ヒューストン警察署の似顔絵捜査官として、鑑識眼のある才能を駆使し、これまで751人の犯罪者の似顔絵を描いて身元を特定し、1,000人以上の有罪判決者を摘発するきっかけを作ってきました。

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筆を片手に強盗、殺人者、ドラッグ乱用者に襲われた被害者と面会して…

毎日、手に鉛筆を持って白紙のキャンバスの前に座り、強盗、殺人者、ドラッグ乱用者に襲われた被害者の人々に会います。彼女のもとを訪れる被害者は、恐怖を感じている犯罪の瞬間に、ほんのちょっとだけ加害者の顔を見ただけという人がほとんどで、似顔絵を完成させるために詳細な情報を提供したいと思ってくれているものの、犯罪の性質上、犯人の記憶がほとんどありません。


このような場合、被害者とおしゃべりをしながら犯人の特徴について色々と聞いていきます。もし被害者が顔を見たと話してくれた場合、実際に顔を見たという確信がなくても、「犯人はどんな顔つきをしていましたか?」と質問するのだそうです。このやり取りの後、被害者から得られた情報を元に、犯人の顔の特徴を描いて修正を何度も重ねながらスケッチしていきます。


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沸きあがる恐怖と戦いながら、1年に120人を描く

こうしたセッションを通じて平均して毎年120人!もの犯人の似顔絵をロイスは描いているそうなのですが、当然、非常に感情的になってしまうことも多々あるのだとか。被害者に起こった恐ろしい事件を追体験しつつ、犯人の似顔絵を描いていく責任があるからです。


そのような瞬間を追体験することは、ロイスにとって非常に辛いことであるのには理由があります。実は、過去、1972年にさかのぼってみると、ロイスは似顔絵捜査官に向かい合って、今彼女が目の前でセッションしている被害者の席と同じ場所に自身が座っていました。というのも、ロイス自身が連続強盗殺人犯に襲われた経験があるのです。

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「私も経験しているからわかりますが、誰かの悪しき行為のせいで、被害者は死を考えてしまうほどなんです」。ロイスは、彼女のもとを訪れる人たちの言いようもない苦痛を理解している。
ロイスが被害を受けたのは21歳で、当時はダンスと演技のキャリアを追い求めていたそうです。

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被害に会ったことがキッカケとなり、彼女に閃きが落ち道が拓ける

彼女が被害に遭った日から人生が一変しました。幸運にも生き残ることができ、犯人がドラッグ所持により警察に逮捕されたことを知った後、あることにひらめいたのです。

L.Aにあるアパートをすぐに退出し、テキサス州サンアントニオに飛び立ったのです。なぜか? テキサス大学で美術(fine art)の学位を取るためでした。大学で絵を学んで3,000人もの観光客の似顔絵を描く仕事をした後、似顔絵捜査官になるのに必要なスキルをそこで磨いたのです。

「私はヒューストン警察署に働きかけて、目撃者と一緒の席に座らせてもらったんです。犯人の似顔絵を描けますよってね。私が言った通り、最初に殺人犯をスケッチして確かにその男は警察に摘発されました。」

ロイスの似顔絵の腕によって、これまで751人の犯罪者が身元を特定され、1,000人以上の有罪判決者が摘発されています。彼女の描く似顔絵の力を借りなかったら、犯人の多くが捕まっていなかったでしょう。この偉業は「 描いた絵最多で犯罪者の身元を特定した画家|Most Criminals Positively Identified Due to the Composites of One Artist  」というタイトルのギネス世界記録に認定されています。

これまで女性の誘拐犯や殺人犯まで幅広く似顔絵を描いており、ロイスがスケッチした犯人の顔をテレビの報道で見て、犯人の友人や親せきが多数の情報をよせてくれるのだそうです。下の写真を見るとわかる通り、彼女のオフィスの壁には自身が描いた似顔絵がきっかけになって逮捕された重罪人たちの顔が並んでいます。ギネス世界記録認定証が彼女のキャリアの成功を証明していますね。

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現在66歳でも、悪を駆逐し正義のため、似顔絵捜査官を続ける!

ロイスは絵を使って人生を変えてきたといっても過言ではありません。彼女は、法に反する者を捕まえるための絵だけではなく、他にも貢献していることがあるんです。 「Soul Survivors」という展覧会では、ホロコーストで親戚を亡くした人々のために肖像画を再現しました。

さらに、似顔絵捜査官の学校(Institute of Forensic Art)を創設し、多くのアーティストが全米の警察署で活躍できるように証言や写真の一部を手がかりに似顔絵を描くスキルを学生に教えています。

他にも、イスラエルで初の似顔絵捜査官になったギル・ギブリも彼女の教え子の1人で『Faces of Evil(邪悪な顔)』という本を共著したり、アメリカの人気番組「アメリカズ・モスト・ウォンテッド」にも出演してキャリアを重ねてきました。 66歳になった現在も、これまでしてきたように悪を駆逐すべく正義のために犯罪者の似顔絵を描き続けています。

「私がもう少しで殺されそうになった時、憎らしい犯人の行為をたった1枚の似顔絵で止められることに気づいた瞬間、似顔絵捜査官という職業になるぞと心に誓ったんです。あなたも1時間もかかっていないちょっとしたスケッチで、犯人を捕まえられると思うと、犯人を捕まえるのに夢中になってしまうはず。私は完全にこの仕事中毒で、似顔絵で犯人を捕まえられるこの仕事を辞めたいとは決して思いません。」

下の動画では、ギネス世界記録の編集者であるグレイグ・グレンディの似顔絵を特徴だけを手掛かりにスケッチしているロイスの様子が見られます。彼女のスキルをぜひご覧あれ!


【ギネス世界記録トリビア: 画家系の記録 】


他にも、「最も多産な画家|Most prolific painter⇒パブロ・ピカソの13,500作品(※ピカソが記録保持者なんですね!!)」「オークションで売られた最も高価な絵画コレクション|Most expensive collection of paintings from a private estate sold at auction⇒2億6千4十万ポンド 」「 最高齢の画家|Oldest painter⇒103歳で他界したアルフォエウス・フィルモン・コール 」などがの記録タイトルが存在します。

また、「 4時間でする最多フェイスペインティング(チーム)|Most faces painted in 4 hours (team)⇒4人の画家で680人」などは、日本でも十分、挑戦できるるよい記録です。


「画家」にまつわる記録挑戦については、皆さんのほうでも調べてみるといいかもしれません。 検索は英語のみになりますので"paint""painter""painting"などの
単語を打ち込んでみて下さい。



[ 編集部 スズ ]